おれにゴタクを並べさせる世の中は間違っている

いつ死ぬかわからないので過去に書いたモロモロの文章をまとめてみました。

●文科系のためのKEIRIN入門⑥ 風と意志と義理人情 2013年9月14日 

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「競輪予想で最初にすることは、誰が最初に飛び出して先行をするかである」ということは説明しました。 

誰かが、先行逃げ切りという華々しくもチャレンジングなことに挑まなければ、レースは動かない。穏便なことだけをやっていては世界は動いて行かない、ああ、まさに人生のようですね。 

 

先行というチャレンジングなことをする選手には条件がありました。 

 

条件①「とにかく、自分の脚力なら勝てるという絶対的な自信がある」

条件②「若い選手が「自分は一生懸命走る選手です」と選手や客にアピールしたい

条件③「後ろに地元のスター又は名選手がついているので勝たせたい

条件④「自分のラインが長く、後ろの選手の技術に信頼が置ける」

 

以上の条件を考慮し、ラインと「先行」の予想は以下の通りとなりました。

 

 

   ←まくり ❻松井珠-⑦松井玲 (中部ライン)
       ←まくり ❹柏木-①指原 (九州ライン)
 ←先行 ❸渡辺-⑨小嶋-⑧高橋 (埼京ライン) 

 

 

 

地元埼玉で開催される決勝で後ろに同県の先輩が付き(条件③)、自分のラインが他のラインにくらべて長い(条件④)ことから、❸渡辺が先行してレースの口火を切ることになるだろう、と。

で、❹柏木はその先行を追走し、4番手あたりからタイミングを見てまくりに勝負を賭ける。若くて一番勢いのある❻松井を先行させてはまくれないことを警戒してなるべく後ろに置くような動きをし、❻松井は最後方から一気にまくる展開になる…とここまで。


では、残りの2人はどうするか、という話です。

⑤篠田は逃げもできるし追込もできる「自在」のスター選手。
②大島は「追込」のスター選手ですが、ライン条件の折り合いがつかず、どちらも一人で戦う(単騎)ことを選択しました。

ちょっと応用編になりますが、この二人の展開想定をしてみましょう。

まずは⑤篠田から。果たしてこの選手はどうしたらいいのでしょうか。

 

結論から言うと、彼女は「飛びつき→切り替え」を狙って行くハズです。
飛びつき、とは先行ラインが加速したらその後ろに勝手について行き、風をよけてスピードに乗って前方に出ることです。そして、切り替え、とは、後ろから来るであろう別のラインが通り過ぎる時に今度はそっちについて行くことです。イメージとしては、傘がないのに雨が降りだした時に、屋根のある所を探しながら進むような感じ、と言う感じです。

まず、スタートと同時に、⑤篠田は選手たち全体の一番先頭に出ます(Sを取る)。そしてそのまま周回していくと、さっきの展開でいけば❸渡辺の埼京ラインが先行を狙って飛び出してきます(ホントはもっと複雑ですがイメージしやすいように書きます)。

そして、横を過ぎて行く瞬間に、⑧高橋の後ろに無理矢理入るのです。それである程度走ります。そうすると今度はまくろうとして❹か❻のラインが上昇してくるので、どっちかの後ろにつきます。そしてまた風をよけて追走して…と、こういう展開を描いているわけです。

地元九州の3番手を避けた⑤篠田はこう考えると想定します。

 ①「まず、先行するのは❸(埼玉)か❻(中部)だ。❹は自分の地元だから無茶できないけど、2車だから先行はないと思うので九州の仲間を裏切ることはない」

②「多分地元だから❸がくるだろうけど、4番手とはいえ前には出られる」

③「個人的には勢いがあってスピードに乗ったらヤバい❻が先行して欲しい…そうすれば❻⑦の後ろで3番手だし、⑦はイマイチ下手だから、タイミング逃して車間が空いて、そこにハマれば2番手だ…まあ、❻⑦の後ろに乗ってすっ飛ばして途中で抜いてもいいや。だって何の絆もないもん(他地区だから)」

 

どうですか?頭脳戦でしょう?ロジカルでしょう?全部妄想だけど(笑)

ここまで読み切れば、もし❻が先行ならば⑤は結構な有力選手になります。2、3着には絶対に入れたいところですし、穴ならアタマ勝負でしょう。

さて、単騎で「追込」選手の②大島です。
大島は「追込」なので、⑤篠田ほどの機動力(タテの脚)はないと考えられます。
彼女は引退した伝説の逃げ選手の前田(千葉)の番手にくらいついて、時に前田の勝利のためにブロックに励み、時に最終直線で前田を差し、といった名勝負を繰り広げて来た「マーク屋(巧い追込選手のこと)」です。

ですから、彼女の持ち味は「逃げ選手の後ろで追走し、最終直線で差す」技術なのです。ここが「自在」の⑤篠田と違う点です。だから、彼女が選択したのは、どこかのラインの逃げ選手の後ろに無理矢理入る「競り」です。これが多分、競輪の一番人間臭い(ブンガク的?)なところと言えます。

では、どの選手に(どのラインに)競り込むことになるでしょうか。

競輪は風と義理人情の競技ですから、同じ関東であり地元である❸渡辺-⑨小嶋-⑧高橋「関東(埼京)ライン」に競り込むことはできません。それをやっては、今後のレースでの連携ができなくなる可能性があります。

となると、彼女が狙うのは❻松井珠-⑦松井玲の「中部ライン」か、❹柏木-①指原の「九州ライン」となるワケです。さて、どちらか?

この場合、❻松井珠-⑦松井玲の「中部ライン」の⑦松井玲にでほぼ決まりです。
その理由は以下の通りです。

★「他地区だから」
中部地方と関東地方なので、今後レースで連携する機会はほぼありません。
 
★「とにかく若い❻松井珠がスピードと勢いについては明白だから。」
→最大の理由はこれ。脚がある若手の後ろの方が有利に決まっているからです。

★「二番手の⑦松井玲が番手選手としてはまだ若く、勝てそうだから」
→競り合いというのは技術なので、若い選手には熟練が足りないことが多いです。

★「二人の練習場は名古屋と豊橋に分かれていて、連携がいいかどうかわからないから」
→細かい話ですが、ほんのわずかなスキも見逃せないワケです。 

 

ここは応用編ですので飛ばしてもらっても結構です。
ここまでの基本が分かれば十分ですが、当方、「文科系のための」と名乗っている以上、次の「心理的側面」にも注目したいところです。 

 ★「もう一人の単騎、⑤篠田がこのラインの先行を期待してるっぽいから」

→⑤がこのラインへの飛びつきを狙っている可能性が高いので邪魔をしたい、という感じでしょうか。後ろが競りでガチャガチャやってる不安定な状態にすれば❻は簡単に先行はできなくなり、先行できたとしても⑤の理想である「先行の❻のスピードに乗って勝つ」という狙いを妨害できる。さらに、❻をスピードに乗せないようにすることで、今回別戦の地元関東の❸⑨⑧にも有利に働くわけで、たとえここで負けても「恩を売る」形となり、今後の連携を考えると長期的に見て自分にメリットになるわけです。

 

ということで、競輪新聞の原稿を作ってみましょう。

 

大宮競輪最終日 S級決勝 

先頭固定2000m

 

 <コメント>

①指原「篠田さんと話し合って柏木くんの後ろ。」
②大島「決めずに。」
❸渡辺「先行。」 
❹柏木「自力」
⑤篠田「位置決めず自力自在」 
❻松井珠「先行主体で。」
⑦松井玲「松井珠をマーク。」
⑧高橋「埼京の後ろで。」
⑨小嶋「渡辺くんに任せます」

  

 <周回予想> ⑤・❹①・❻(⑦②競り)・❸⑨⑧

 

<最終B>

     ←まくり❻②⑦
        ←まくり❹①
   ←先行❸⑨⑧⑤

 

本紙予想 渡辺のメイチ駆けに乗る地元小嶋のV。若手期待の松井珠と叩き合いになれば巧者篠田の差し脚一考。

⑨ = ③ -⑧④② 

⑨ - ⑧ -③④② 

⑤ = ⑨②⑧ 

 

 

なんてね。

 

いやー壮大なお人形遊び、いかがでしたか?たまたま競輪関係のツイッターでみつけた「AKBで競輪の出走表を作ってみた」を貼付けてみただけで(実は出走表はコピペなのです…年齢は調べたけど)、ここまで、もう一度書いちゃうけど、ここまで、ムダに長い物語が紡げるワケです。

 

ここまでで「基礎編」は終了です。長々とお付き合いくださいましてありがとうございました。当方、アイドル方面に暗いのでそこら辺の知識の曖昧さはご容赦ください。

次回以降はちょっと細かいですが、「コメント」の読解をやってみたいと思います。
これはまさにおれの職業柄、避けて通れないのです(笑)

(「応用編」に続く)

 

【2020年7月追記】よくここまで書いたもんだ。途中で段々と興が乗ってきて筆が止まらなくなってしまった。今回再掲するにあたってかなり加筆と修正をした。競輪とアイドルの両方のオタクからあれこれ言われそうだけれど、そんなもんは気にしない。