おれにゴタクを並べさせる世の中は間違っている

いつ死ぬかわからないので過去に書いたモロモロの文章をまとめてみました。

「マクドナルドは猫の肉」と山口瞳

山口瞳の名著でありおれの座右の書である『草競馬流浪記』の中で、盛岡競馬に旅打ちに行くので開通直後の東北新幹線に乗るため、山口瞳が大宮駅前のマクドナルドでフィレオフィッシュを食うシーンがある。
(若い衆に言っておくと、東北新幹線は最初大宮が始発駅だったのだよ…そのころ大宮駅前の小学生だったおれは、街の活気づく感じを鮮明に覚えているよ)

 

草競馬流浪記 (新潮文庫)

草競馬流浪記 (新潮文庫)

 

 


で、そこに「僕は『マクドナルドは猫の肉』という小説を書こうと思っている…」というくだりがあって、初見の時からずっと気になっている。

もしかしてこの有名すぎる都市伝説、山口瞳が元祖なのか?
それとも、都市伝説が先で山口瞳が乗ったのか?

当時の人気作家である山口瞳がそんなもんに易々と乗るか?もし、山口瞳が都市伝説を知っていたとしたら、「そんな噂があって、それも何だか正しいような気がしてくる」みたいな書き方をするはず。逆に悪意をこめてみれば、今のようにネットなどのある世の中ではないし読者層が年配だと仮定すれば、あたかも自分で考えたかのようにパクッた(というか利用した)のか。

不思議なのは、そのくだりの部分だけ妙に浮いているのだ。山口瞳の文章ってそういう傾向がないわけじゃないんだけど、どこかでこのフックを使うくらいのことしそうなのに、してない。唐突に書いて、唐突にやめる。何だか、無理やり感があるのだ。

この都市伝説はいつごろから広まったのか。もし執筆前だったとしたら、それはそれで山口瞳独特の「愛くるしい小物感」な気もするんだが…