おれにゴタクを並べさせる世の中は間違っている

いつ死ぬかわからないので過去に書いたモロモロの文章をまとめてみました。

●コロナ禍の中で起きたある事件(2020年5月1日)

コロナがらみで麻雀界で事件が起きている。

昨年、ある団体の王座についたSというプロがいた。彼は昨今の麻雀プロのようなタレント性などのあるタイプではなく、麻雀に対する姿勢のひたむきさや真面目さでは有名で、団体の理事などをやって若手を鍛えたり、「団体の風紀委員」とまで言われるほどの硬骨漢で、昨年の戴冠は「ついに努力が報われたね」といった感じで、業界ではなかなかの美談として取り上げられていた。

そんなSプロが3月の終わり頃、コロナに感染した。

個人的にも驚いてしまったのと同時に、「何とまあ不器用で不運な人生なんだろ」と同情もしたんだが、実は彼、各団体のチャンピオンが対戦するビッグマッチの映像対局にその数日前に出場していて、それからの感染発覚だったのだ。

業界的には大混乱に陥った。各団体のトップが牌を握って対戦していたので彼らも濃厚接触者となってしまい、その後のビックマッチに出場する予定だった選手も活動自粛。放映するネットメディアも対局をキャンセルし、プロリーグであるMリーグにもその選手がいたためにちょうどこれからファイナルシーズンになるところで緊急事態宣言もあり延期。雀荘の休業と共に麻雀プロはゲスト活動もできなくなりこの1ヶ月というもの彼らは収入を激減させている。

その感染してしまったSプロは回復し、闘病記を発表するとの『近代麻雀』の予告が出た今日、「Sプロが先週、団体の若手と都内の雀荘で打っているのを見た」と告発された。

本人からの否定のコメントも出ず、一緒に打っていた若手からもコメントがなく、「どうやらこれはマジなのか…」と業界関係者やファンに動揺が走っている。

回復していても、一度感染した人間が麻雀打ったらイケナイ、ということではない。それは大変よくない考えだ。

目下論壇での問題は、彼は団体の第一人者の地位にいること、そして同じ麻雀プロが現在活動自粛の状態にあるということ、そしておれらのような愛好家も、雀荘経営者も、メディア関係者も必死でガマンしている中でやってしまったこと、なのだ。

事情通に言わせると彼は団体内でも若手の教育係で、規律や規則にうるさい理事であるようで、それが彼への批判をさらに強いものにしているようで。

彼が人一倍麻雀に情熱と努力を傾けてきた人だから「やはり麻雀牌に触りたくなったんだろうな」という擁護論もある。

でも、流石にこれはマズいような気がする。そもそも彼が感染してしまったことに何の罪もないのだけれど、そこから波及して試合を流してしまった上に麻雀プロたちも必死でガマンしている以上、筋というか仁義というかダンディズムとしてもここはガマンすべきだったように思うよな。

しかもその雀荘は彼の団体のお抱えのような店で、そもそも営業していたことというが不思議で、理事としての彼の何がしかの力があって店を開けたのでは、という邪推までされてしまっても仕方がない。

カミュじゃないけれど、コロナに感染したことは不条理というか不運なんで、だからこそ人間として誠実さを見せるより立ち向かう方法はないじゃないかと。

何ともねえ、困ったもんだよねえこのコロナってやつは。おれだって早く麻雀牌触りたいよ。

 

【追記】最近書いたものだから追記も何もないのだが、黒川検事長といいSプロといい、緊急事態宣言下でもやりたくなってしまう麻雀というものの魅力は凄いなと。